相談者:母(39歳)
子供:息子(2歳11ヶ月)
相談内容:もうすぐ3歳を迎える息子の、料理のお手伝いについて相談です。
息子にはきちんと食べ物や料理の知識を身に付けてもらいたく、家庭でできる範囲の事は教えていきたいと思っています。
でも、家庭でできる食育として、具体的にどんな事を行っていけばよいか、少し困っています。
基本は料理のお手伝いなのかな、と思ったのですが、実際、一緒に台所に立たせてみると、調理がはかどるどころか、あちこち勝手に手を出されるし、余計な作業が増えて大変です。
包丁や火も扱う場所ですから、危険もあって、目が離せない緊張感もあります。
一緒に楽しく、と思って色々チャレンジさせるのですが、いつも返ってイライラしてしまい、息子もあれこれガミガミ言われて、きっとあまり楽しくないと思います。
こんな風になるなら、料理のお手伝いはもうちょっと大きくなるまで待った方がいいのでしょうか。
食育の基礎は、間違いなく家庭で育まれます。
毎日毎食、何をどんな風に食べるか、将来賢く選択できるよう成長するかどうかは、幼い頃の食生活が少なからず影響するでしょう。
ですから、家庭で色々と食育を行おうと考えていらっしゃるのは、とても素晴らしいことです。
では、具体的にどんな事を家庭で行っていくかですが、ここは迷う人もいるかもしれませんね。
「食育」という言葉から、教育的なことをイメージする人もいるかもしれませんが、そう固く考える必要はありません。
ポイントは2つ。
親子でできる食育は、料理の手伝いだけではない、ということ。
そして、親自身の性格と子供の個性・発達に合わせて食育の内容を選ぶ、ということです。
・一緒にスーパーにいって、旬の食材や加工される前の食材を見て学ぶ
・おままごと遊びをする中で、食材を切る、焼く、煮る、盛るなどを体験する
・ミニプランター等で、簡単な野菜(トマト、キュウリ、ピーマンなど)を親子で育てる
・簡単で安全な料理の工程(混ぜる、こねる、盛りつける、片付けるなど)を一緒に行う
・ブドウ狩り、イチゴ狩りなど、旬のフルーツ狩りに出かけて、もぎたてを食べる
子供が幼い頃ほど、「本物の食」という言葉がキーワードになると思います。
食材本物の姿、本物の味に触れられる機会をどんどん増やしてあげることが、とても良い食育活動です。
最近は、ネットスーパーがとても便利です。
特に、小さいお子さんがいる家庭では、買い物に行くのも一苦労だったりしますので、ネットで食材を一括購入する方も増えていると思います。
ただ、ネットスーパーばかりでは、子供がお店で様々な種類の生の野菜や果物、魚やお肉を見る機会が極端に少なくなってしまいます。
これはとても残念なことですし、食育の面から考えてもマイナスです。
一緒にスーパーや商店街に行って、旬の野菜がたくさん店頭に並んでいる場面や、切身になる前のお魚を見る体験も食育の一環です。
ネット宅配派の方々も、たまには子供とスーパーへ足を運んでみましょう。
また、この時期の料理のお手伝いは、お手伝いと呼べるような結果にはならない場合が多いと思います。
ぐちゃぐちゃに汚されたり、余計な手間が増えたりすることの方が多くて当然です。
ですから、それを見越して、時間に余裕がある時、遊びの延長として一緒にできる時、ごく簡単な作業がある時など、環境が整っている時に、料理のお手伝いに誘いましょう。
いずれにせよ、子供の発達に合わせたお手伝いを考えてあげるのが良いですね。
・何が食べたいかを子供に考えさせて、必要な材料を買いに行く
・子供専用の調理用具などを用意して、一緒に料理をする
・お米を研いで炊く係、野菜をあらう係など、子供に様々な役割を与える
3歳を過ぎたら、子供の理解度が非常にアップし、親とのコミュニケーションもスムーズになりますし、手先の器用さも増してきます。
こうなったら、食育活動も、料理のお手伝いの内容もグレードアップできます。
この時期のキーワードは「食への自主性」です。
子供はきっと何でも自分でやりたがるし、自分はできるんだ、と思う体験が、食育に限らずとても大事になってきます。
例えば、プリンやホットケーキ、ゼリーなど、子供の大好きなお手軽おやつを一緒に作ってみてください。
きっと目を輝かせて喜ぶはずです。
普段の料理のお手伝いも本格的に始められます。
子供専用の包丁、まな板、エプロンなどをプレゼントしてあげましょう。
自分専用という事がまず何よりも嬉しいですし、台所に立てる、ママを手伝える、という満足感も味わえることでしょう。
包丁に関しては、最初から本物の包丁を渡すべきだという説もあれば、安全性の高い子供包丁を勧める説もあり、親は迷うところだと思います。
ですから、ここは我が子の個性を見極めて、本物の包丁を渡すか、安全度の高い子ども包丁にするか決めればいいと思います。
慎重派で親の指示をしっかり落ち着いて聞ける子、料理にとても関心が高い子などは、早くから本物の包丁を持たせてあげても大丈夫だと思います。
でも、細かい作業が苦手な子、落ち着きのないアクティブな子、料理にそこまで関心のない子に関しては、無理して早くから切れ味鋭い包丁を渡す必要はないと思います。
ある程度子供包丁の扱いがうまくなってから、もっとよく切れる包丁へ移行したって遅くはありません。
最後に、子供と一緒に台所に立つのが苦手なママや、そもそも料理が得意ではなく、教えてあげられることが少ないと感じているママ、仕事と家事の両立で余裕をもって台所に立つ時間が少ないママなど、様々な理由で子供の成長に合わせて十分な料理体験をさせてあげられていないなぁと感じている親御さんも中にはいらっしゃると思います。
そんな方におすすめの食育活動を紹介します。
料理の手伝いだけにこだわらず、柔軟なアイデアで子どもの食育をすすめていきましょうね。
・親子料理教室、クッキング体験教室などを探して、一緒に参加して親子で学ぶ
・オープンキッチン、カウンターキッチンのお店に連れて行って、調理過程を一緒に見る
・鉄板焼き、鍋料理のお店など、調理する工程を自分で楽しめる料理を食べに行く
・サラダバーやビュッフェスタイルのお店に食べに行って、バランス良く様々な食材を選べるよう教える
・「いただきます」「ごちそうさま」の挨拶の意味について伝える
・『食事』『健康な体』にちなんだテーマの絵本を一緒に読んで、食べる意味を考える
(2014/4/21 食育指導士・相楽まりこ)