◆木内千比呂
株式会社クロックワークスタジオ代表取締役。
1969年生まれ。ちなみにココ・シャネルと同じ誕生日。
大阪に生まれ、岡本太郎の「太陽の塔」を観て育つ。
昔から好奇心が強く、今に至る。
品格とユーモアをテーマにこれからも発信し続けたい!
写真の方が、大阪のデザイナー・木内さんです。
今回は、新たに手掛けたお食い初めや初節句で使える食器セット「寿重(jejeu)」が完成するまでのお話や漆器へのこだわりなどについて、たっぷりとお話をお伺いしてきましたので、ぜひご覧ください。
インタビュアーは、5歳の女の子を持つママさん編集者・峰岸さんです。
食器セット「寿重(jejeu)」
峰岸
本業は、ウェディングドレスをベビードレスやおくるみなどへリメイクされてらっしゃるんですよね?
なぜお食い初めの食器を手掛けようと思ったんですか?
木内
ウェディングの関係でよく仕事をさせてもらう、引き出物業者さんがいてるんです。
その方に漆器メーカーさんを紹介してもらって、いろいろ話をさせてもらったんですね。
そのときに、漆器業界自体が少し元気がないという現状を聞いたんです。
昔は、引き出物といえば漆器が定番だったけど、今は色々な商品も出てきてるから漆器を選んでもらうのに、価格や品質面でいろいろご苦労されているそうで・・・。
峰岸
そんなことがあったんですか。
木内
そう。
それで、「日本古来の伝統工芸なのにもったいない。何か役に立ちたい。」と思うようになったんです。
見せてもらったらかわいいのもたくさんあって、このまま漆器が衰退してしまうのは、本当にもったいないと思ったの。
峰岸
そうですよね。
それで、この器を思いついたんですか?
木内
うちは、ウェディングドレスを赤ちゃん用に小さくリメイクしたり、飾れるようなドールドレスにしたりしてますから、お食い初め食器も、なんか「コンパクトにしたい」と思ったんです。
峰岸
ほんと、コンパクトです。
「コンパクトにしたい。」
木内
お食い初めって一回だけのセレモニーなのに、用意するものはスゴイでしょ。
「もっと、コンパクトに出来へんかな?」と思って。
スタッキング(※)が好きなんで、そんな話を業者の方としてたんですよ。
※プラスチックカップを、積み上げたり戻したりするスポーツです。
峰岸
へー、スタッキングですか?
木内
そう。
そしたら、入れ子になる漆器の型を見つけたんですよ。
「これ絶対かわいいから、お食い初め用の食器に使えへんか?」って言い続けた。
峰岸
言い続けたんですね(笑)
木内
そうなんです。
だから、もともとの話から言ったら、できるまでにものすごい時間がかかってる。
峰岸
どのくらいですか?
木内
もともとの企画から言ったら、7年くらい経ってるわ~。
峰岸
7年ですか?
木内
そう。
でも、その分いいものができたと思います。
ヨーロッパのティーカップのイメージ。
峰岸
そうですね。
色合いが素敵なんですけど、これは木内さんが?
木内
そうです。
入れ子になる器をただ赤とか黒に塗るんでは、もともと昔からあるもんやしね。
峰岸
確かにかわいいイメージですね。
木内
そうでしょ。
私ヨーロピアンのティーカップとか好きやから。
そんなイメージで、ピンクとかブルーとかがいいな~って。
峰岸
赤ちゃんが使うものだから、優しい色合いっていいですよね。
木内
そうそう。
それで、そんなん作れないかって、ホンマにずーっと言い続けてたんですよ。
で、福井県の漆屋さんに出会って、通い続けました。
峰岸
職人さんを口説くために足しげく通って、地道な提案を続けられたんですね。
木内
そうなんです。
峰岸
思い通りの商品になるまで試作を重ねられたと聞きましたが。
木内
はい。
思ったとおりの発色を出すのに、ホントに苦労しました。
職人さんに何度も何度も試作してもらいました。
もう途中でやめようかと落ち込むこともありましたけど、自分の意思で時間を作って進めてきたことやから・・・。
峰岸
こだわりをあきらめずに、頑張られたんですね。
奥に写っているのが試作品です。
木内
そこから、職人さん始めいろんな方の協力もあって、自分のイメージしていた方向に進んでいったんです。
最初はいろんな柄物の食器を考えたけど、今にして思えばシンプルなものにして本当によかったです。
峰岸
この色合いになるまでが大変だったんですね。
木内
そうなんです。
かわいい~と思うような淡いピンクとブルーになるまで、つやなし、半つや、全つやなど色々試作品を作りました。
色見本を持って行っても、なかなか思い通りの色にできなくて、苦労しましたわ。
峰岸
この色に辿り着くまでに、試行錯誤を重ねられたんですね。
他に苦労されたことはありますか?
木内
異なる色の境目の際に、金のラインを入れてもらうのが大変でした。
塗りはスプレーでなく、ひとつひとつ手作業で、このラインは本当に腕のいい職人さんでないとうまく出来へんのです。
職人さんも最初は嫌がったけど、何とかお願いしてやってもらったんです。
峰岸
全部手塗りなんですか?
木内
全部手塗りというのは、こだわりの一つです。
全て漆器職人さんの手塗り
峰岸
なるほど。
それと、この器は、小物入れとか身近なものとして使えるっていうのがいいですね。
お食い初めのときだけ使って、後はしまっておくっていうんじゃなくって。
木内
そうなんですよ~。
おもちゃにしてもらってもいいし、その子の大切なものを入れて飾ってもええし。
女の子だったら、大きくなってお嫁に行くときに嫁ぎ先に持って行ってもらえたら、ホンマに嬉しいですよね~
峰岸
そうですね。
木内
リングピロー(※)とかにして。
自分がお食い初めで使った食器を、結婚式でリングピローとして使ってもらえたりしたら嬉しいです。
※結婚式で指輪の交換をするまでの間指輪を置いておくものです。
峰岸
お食い初め!って肩に力いれて準備して後は御蔵入りっていうよりも、夢がありますね。
こんなに可愛らしい色あいで、インテリアとしても使えるこの食器は、とても実用的だと思います。
ところで、一番こだわったのってどの部分なんですか?
木内
コンパクトになるってことやね。
コンパクトになりました。
峰岸
今の住環境にあっていますよね。
木内
はい、伝統のなかにも遊び心が入ったようなものを目指しました。
峰岸
確かに「和モダン」って感じ、しますよね。
木内
はい、うちのモットーに「品格とユーモア」っていうのがあるんです。
これは商品に対してもそうで、品のある中にもちょっとしたユーモラスな部分を入れたいと思って。
品格ばかりじゃ堅苦しいでしょ。
峰岸
そうですね。
ユーモアって、余裕がないと出せないですものね。
木内
でも、うちの会社はユーモアばっかりになっちゃうんですけどね。
峰岸
いいじゃないですか。
笑顔が絶えないって素晴らしいです。
取材日:2013年7月10日
取材場所:大阪府豊中市 ロゼッタロゼッテ
いかがでしたか?
木内さんとの出会いは、某展示会でした。
新しいコンセプトの「お食い初め食器セット」が展示会に出展されていたのを、偶然見つけたんです。
その瞬間に恋に落ちてしまいました。まさに「一目惚れ」でした。
次の瞬間、「ぜひ取材をさせてほしい」とお願いしていたのを覚えています。
なお、木内さんの食器セット「寿重(jejeu)」は、手しごと本舗(楽天市場)でご購入いただけます。
(2013/7/19 編集長・おかざき)